着物を未来へつなぐ「リペア」という選択

私たちの仕事のひとつに、「お着物のリペア」があります。
黄変やシミ、剥がれてしまった金彩などを修復し、ときには美しくアップデートを加えることで、着物に新たな命を吹き込むのです。

たとえば——

「曽祖母から祖母、そして母、私へ……。時代を駆け抜け、少しくたびれてしまった着物。このままでは成人式には着ていけない……」
「祖父母が孫のために贈ってくれた祝い着。お兄ちゃん、お姉ちゃんだけで終わらせず、弟や妹にも着てもらいたい。だけど、やんちゃ盛りの子たちがつけた大きなシミまでそのまま譲るのは、ちょっと気が引ける……」

そんなふうに、手放すには惜しく、かといって買い替えるには高価すぎる——
お着物にまつわるお悩みを解決するのが、私たちのリペアの仕事です。

リペアを施した着物たちは、その後も日々のお手入れや小さな修繕を繰り返しながら、大切に次の世代へと受け継がれていきます。

このような仕事に携わっていると、ふと現代のファッション事情について考えさせられます。
ファストファッションの流行により、衣料品の大量廃棄が問題となり、地球温暖化や資源の枯渇、環境汚染、さらには途上国における労働環境の悪化など、深刻な社会課題が浮き彫りになっています。
(もちろん、着物離れにより、処分される着物が増えていることも見過ごせません)

たとえどれだけ問題があったとしても、これからの時代、再び世の中が着物一色になるような未来は、逆立ちしてもやってこないでしょう。
それでも——

着物に限らず、「どうすればモノを大切に使いたくなるのか?」
「どうすれば、自分が大事にしていたものを、次の誰かにも引き継ぎたいと思えるのか?」
そんな問いを、私たちリペアに携わる者として日々考えています。

そして、時代から時代へとバトンを渡すように受け継がれていくモノたちの楽しさを、臨場感をもって発信していくことこそ、今の私たちにできる小さな一歩なのかもしれません。